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■定年後の再雇用者の賃金、最高裁判決■

《高裁へ差し戻しに》

 本件は、定年退職後再雇用された嘱託社員(X)が、嘱託社員と正社員の基本給及び賞与に関する待遇差は労働契約法20条に違反すると最高裁まで争われている事件です。

 Xが、再雇用されたY社には、正社員と別に嘱託社員の就業規則があり、期間1年間の有期労働契約で、これを更新することで原則として65歳まで再雇用できる等としています。また、賃金体系については、勤務形態によりその都度決め、本人の経歴や年齢、その他の実態を考慮して決め、正社員定年退職時に比べ減額して支給することとしていました。賞与については、原則的に支給しないが、例外的に勤務成績を勘案して嘱託職員一時金として支給されていました。職務内容については、Xは嘱託社員となって以降も従前と変わらない勤務を続けており、責任の程度も相違ないものでした。

 争点となったのは、基本給、皆精勤手当などが、労働契約法20条に違反したかでした。1審2審では、職務内容、職責ともに定年前と変わらないのに、基本給が、4割~5割ほどに減額されていることなどから、労働者の生活保障の観点からも看過しがたく、正社員時の6割を下回る部分は違法であるとしました。

 一方、最高裁では、基本給、賞与に対してその性質などを明らかにする必要があることを、次のように指摘しています。

 基本給について、管理職以外の正社員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給には職務給としての性質も含まれているとみる余地があるほか、職能給としての性質も含まれていないとはいえない。

 これに対し嘱託社員の場合、役職に就くことなどは想定されておらず、異なる基準のもとで支給されていることからも正社員の基本給とは性質が異なるものとみるべきである。

 原審ではその性質や支給の目的を何ら検討しておらず、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま20条違反に当たるとした判断についても、同条の解釈適用を誤っているとし差し戻して、それぞれの性質、目的を十分に検討する必要があるとしました。