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■役職手当と残業代■

《固定残業代は就業規則などで明示を》

 5月下旬、会社が支給していた役職手当が残業代に当たるかどうかが争点とされた裁判の、地裁判決が出ています。

 この事件は、Y社の記者として従事していた40代の男性Xが、17年1月から21年7月の残業代(時間外労働の割増賃金)が未払いであるとし、その支払いを求めたもので、Y社はXに支給していた役職手当がその時間外労働分の賃金に当たると主張していました。判決ではY社の給与規定に役職手当と時間外手当が異なる性質のものとして取り扱われていることが指摘され、残業代には当たらないと判断、時効で請求権の消失した期間を除いた分の未払い残業代、約90万円の支払いが命じられました。役職手当に残業代が含まれているかどうかは、争われやすい問題です。労働者が労基法上の管理監督者である場合、会社は残業代を支給する義務を負いません。

 管理監督署とは、労働条件やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者のことで、労務管理上の決定権限を持っていることや、労働時間の裁量、それに見合った待遇を受けている者がこれにあたり、労働時間等の労基法の規定が適用されないため、時間外残業代と休日残業代は支払われません。管理監督者かどうかは、職務の内容や権限の有無などが「実態」により判断されるため、部長や課長等の名称の役職にあっても権限がない「名ばかり管理職」である場合は「労働者」であり、残業代の支払い対象となります。

 また、役職手当が固定残業代に該当する場合は、役職手当から残業代が控除されます。固定残業代は、時間外労働の時間数に応じた残業代を支払う代わりに、毎月固定額の残業代を給与に含めて支給するものです。役職手当が固定残業代に該当するとするには、労使の合意のもと、固定残業代を抜いた基本給の額、固定残業時間と固定残業代、その算出方法を明確にした上で、役職手当を残業代相当額として支給していることを就業規則や賃金規程に明記しておかなければなりません。また、固定残時間として取り決めた時間を超過した場合は、割増賃金を追加で支払う必要があります。