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コミュ力低いで解雇は無効

【能力不足を解雇の理由とした事件】

 これは、協調性に問題があることを理由に解雇されたXが、地位の確認と未払残業代等の支払いを求め争われた事件です。

Xは、公益財団法人から委託を受け事業を行っているY社で18年4月より勤務していましたが、22年6月、待遇面での改善がなされなければ退職する意向を示したため、Y社は退職に伴う事務手続きを進めました。

Xは退職の意思はないとしましたが、Y社は現場に混乱が生じたこと、Xの協調性の低さや日頃のコミュニケーション能力の低さ、上司への言動を問題視していたため解雇を通告、22年9月をもってXを解雇しました。

 これに対し、Xはこのような理由による解雇は不当であるとし、地位の確認と未払残業代等の支払いを求め提訴しました。裁判では、出張日当が未払残業代に充当されるか、そして、本件解雇が無効であるかが争点となりました。

Y社は、職員の出張時は旅費実費及び宿泊費並びに日当を支給すると規定していますが、出張時は厳密な終業時間の管理が困難であるため、出張日当を固定残業代として支払っており、仮に出張日当が固定残業代として認められなくても、未払残業代に充当すべきであると主張しました。しかし、Y社の旅費規則では、出張日当は残業時間の有無や長短にかかわらず、一定金額が支払われるものと定められており、また、賃金規程で役職者に残業手当は支給しないとしているが、旅費規則では事務局長等にも旅費が支給されると規定されていることに照らすと、出張日当が残業代の趣旨で支払われていたとは考え難いと判断。出張手当は、出張の際に必要とする経費を補填するもので、形式的にも実質的にも固定残業代に該当するとはいえないとしました。

解雇については、Xは明示的な退職意思を示していたとはいえず、現場も後任者を雇用しておらず深刻な混乱が生じたかは定かではなく、Xは協調性に欠ける面はあったが業務遂行能力はむしろ評価されていたことから、解雇がY社の業務の都合上やむを得ないときにされたとまではいえないとし、解雇は無効、未払賃金等の支払いを命じました。