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心理的負荷の強度

《業務起因性の有無》

 業務上の事由によりうつ病を発症したとし、労災保険の療養補償給付等を請求したところ不支給決定となったため、その処分の取り消しを求めた裁判がありました。

X(40代・原告)は、14年4月より京都市にある出版社に勤務、編集や写真撮影を担当していましたが、1年後にうつ病を発症し15年12月に解雇予告通知を交付されました。

出版社とは、解雇無効について争いましたが18年7月に和解が成立し、12月、労働基準監督署(被告)に療養補償給付等を請求したところ、不支給決定となったため提訴しました。

 裁判では、Xのうつ病発症の「業務起因性の有無」が争点となりました。

認定基準によれば、業務上の疾病として取り扱うためには、①対象疾病を発病していること。②対象疾病の発症前概ね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。および、③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により発症したとは認められないこと。のいずれの要件も満たすものとなっています。

本件では、①③は満たしていたため、②についての検証がなされました。

生死にかかわる等「特別な出来事」に該当する業務による出来事があったとは認められないため、発症6カ月前の具体的な出来事について、心理的負荷の強度が検討されました。

配置転換については、転換先が閑職であり異動による手当の減額も伴うもので、異例な措置であるとまではいえないものの、明らかな降格であって職場内で孤立した状況になり、少なくとも心理的負荷強度は「中」である。

 しかし、配置転換の前に100時間程度となる時間外労働に従事していたことが認められるため、「出来事後すぐに発病に至っている場合」に当たることから、心理的負荷強度は「強」に修正されるとしました。

また、Xの編集作業に関する能力や適正は一般的に求められる水準にないが、撮影などXの技能を生かすような業務上の配慮も見受けられず、配転による心理的負荷強度は「弱」だとする被告の主張は認められない。

その他の心理的負荷の強度についても判断するまでもないとし、「業務上の疾病」に該当するものだとし処分取り消しを命じました。