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残業手当は割増賃金に当るか

《趣旨に反するものと判断された事案》

 これは長距離トラックの運転手であったXが、時間外労働や休日労働の割増賃金の支払いを求め、争われた事件です。(控訴中)

Xは、一般貨物自動車運送業を営むY社で、北海道から本州を走る長距離大型トラックの運転手として従事していました。Xの雇用契約書には、基本給15万7,500円で、皆勤手当や残業手当等については当社規定により支給と明記されていましたが、実際には、基本給と、売上の10%相当額が残業手当として支給されていました。

Xは、この残業手当についてY社が規定している残業手当(基本給+諸手当に一定の乗率及び労働時間を乗じたもの)とも異なり、時間外手当等の割増賃金には当たらないとし、未払い賃金等の支払いを求め提訴しました。裁判では、Xに支払われていた残業手当が、労働基準法37条所定の割増賃金に当るかが争点となりました。

 本件の残業手当について、Xの雇用契約書には時間外労働等の対価として支給する旨や算定方法についての記載はなく、Y社で定める賃金規定の内容とも異なるものでした。

 しかし、基本給その他の手当とは区別され支給されていたこと、残業手当という名称からすると、Y社は時間外労働等に対する対価として支払っていたと推認されるものの、Xに対して本件残業手当を時間外労働手当等に対する対価とするなどの説明があったとは認められず、XとY社の間に合意があったと直ちに推認することはできないとしています。また、本件残業手当は、時間外労働等の有無やその時間数に関わらず一定額(売上の10%程度)が支払われるものであり、通常の労働時間によって得られる売り上げに対応する部分も含まれるため、その内訳はわからず、時間外労働等に対する割増賃金部分が判別できないものであるとしています。

さらに、本件残業手当はXの売上に基づくもので、労働者の時間外労働時間の有無や程度に関わらず算定可能なものであり、労働者の時間外労働等を抑制するという労基法37条の趣旨に反するものであるといわざるを得ないと判断、時間外労働等の対価として支払われるものとは認められないとしました。

________ 違法な時間外労働、11,610事業場(厚生労働省)_______

 23年度、長時間労働等が疑われ、労働基準監督署の監督指導対象となった事業場は26,117事業場で、そのうち11,610事業場で違法な時間外労働を確認。賃金不払い残業も1,821事業場で認められた。