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【就業規則等に定めのないシフトは無効】

■企業規模によらず無効■

 この事件は、大手飲食チェーン店Y社が、店舗ごとに採用している変形労働時間制が無効であるとされ、注目を集めた事件です。

X(84年入社・正社員)は、当時直営店で864店舗展開していたY社のZ支店に、17年5月から勤務していました。

 その後、成績不振の従業員に対する業績改善計画の対象となり「注文から30秒以内に商品を提供しなければならない」等、達成困難な目標を課され退職を強要されたとして、解雇の無効などを求め名古屋地裁に提訴しました。

裁判では、Xに行われた業績改善計画では、達成困難な目標が設定されていたとは言えないとし、解雇の無効についての部分は棄却されました。

 一方で、Y社が採用していた一カ月単位の変形労働時間制については、要件を満たしていないと判断されたため、法定労働時間(1日8時間 週40時間)が適用となり、該当する期間の未払い賃金分である約61万円の支払いが命じられています。

変形労働時間制を採用するには、次のように示す必要があります。

① 対象労働者の範囲

② 対象期間の起算日

③ 労働日および労働日ごとの労働時間

④ 労使協定の有効期間を労使協定または就業規則などに定める

 当時Y社では、店舗数の多さから全店舗共通のシフトを設定することは、現実的ではないと考え、4シフトパターンを就業規則に記載し、これを「原則として」各店舗ごとに独自のシフトを組んでいました。

Xのシフトも独自の勤務シフトでしたが、Y社は、就業規則上の勤務シフトに準じて設定された勤務シフトを使った勤務割は、就業規則に基づくものであると主張しました。

 しかし裁判では、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することは許容しておらず、使用者の事業規模により左右されるものではないと判断、労働基準法32条の2「特定された週」または、「特定された日」の要件を充足していないとし、本件の変形労働時間制は無効であるとしました。

本件は控訴審まで争われましたが、一審の内容が維持され、結審しています。